債務整理・裁判ブログ

2009年01月20日

売買代金を請求する場合について(最終回)

無事に裁判手続きが終了し勝訴した場合でも実際に代金が自己の手元に入るか否かは
別問題になります。
勝訴の結果、被告が一括または分割払いを任意に履行してくれれば何の問題もないの
ですが、なかには図太い性格の持主がいる事も事実です。
この場合には、回収のために再度裁判手続きを利用せざるを得ないのが実情です。所謂、
強制執行と言われるものです。これには、不動産・動産・債権と言った様に対象物を異に
する様々な方法があります。
ただ、一般的なのは不動産または債権であるのが普通です。

①不動産執行
 →これは一般的には競売と言われるものですが、相手方が不動産を所有してないと
  不可能ですし、通常は銀行等のローンが付いているので費用倒れになり空振りと
  なる可能性が大きく、また、申立ての際に収める保証金も高額になるのが通常で
  あまり実用的とは言えません。

②債権執行
 →売買代金の様に、通常、少額の債権の場合にはこの手続きを選択するのが最も
  有効な方法となります。
  相手方が個人であれば給与や金融機関の預金を差し押さえたり、会社であれば
  その会社が他の会社等に有する債権や会社名義の預金口座を差し押さえをして
  回収する方法です。
  ただ、デメリットとしては差押債権を特定しなければならない為、相手方の勤務先
  や債務を負っている会社等、預金のある金融機関の口座を知らないと出来ない
  のが難点です。

以上のように売買代金回収の為の、大雑把な手続きの流れを書かせて貰いましたが
事案により手続きの仕方も変わりますので、ご不明な点あればお問い合わせ下さい。 

2009年01月19日

売買代金を請求する場合ついて(その4)

ここでは原告(売主)の代金請求について被告(買主)が全面的に争って
きた場合を考えてみましょう。(これを「抗弁」と言います。)
様々なパターンが考えられますが、大雑把に以下のものが考えられます。

①売買契約そのものを否定(否認)するもの。
 →これには「そんなものを買った覚えはない。」と言う契約の成立自体を
  否定する場合や「タダで貰ったものだ(贈与)。」と受取は認めるもの
  の支払い義務を否定する場合が考えられます。

②売買契約は認めるが支払いを否定(否認)するもの。
 →「まだ、商品を受け取っていない。」と言う契約の不成立の主張だった
  り、「品物は届いたが破損していて使い物にならないから支払いする
  必要はない。」と言った後発的なアクシデントを主張して支払い義務を
  否定する場合が考えられます。

①の場合には、契約書または注文票があれば反論(再抗弁)出来ます。
②の前段の場合には受取書があれば反論でき問題ありません。
また、後段のような場合は様々な原因があるのでしょうが、苦情がないのは
考えにくく商品の取替えをして同じように受取書を貰っておけばこれも問題
ないでしょう。

この様に売買契約の成立に要求される要件である

①売って下さい。(注文票)
②はい!売りましょう。(代金・支払日・受取書) ※売買契約成立※

を満たす証拠(書面)があれば裁判上で負ける事は考え難いでしょう。
ただ、勝訴しても実際の回収とは別物である事を覚えておいて下さい。
この点については明日書きます。

2009年01月16日

売買代金を請求する場合について(その3)

引き続き書いて行きたいと思います。

昨日、書きましたとおり①~③の事実を証する証拠がある場合、いよいよ
訴訟提起の為に訴状を作成する事になります。通常、裁判所・被告・自分
(原告)用に3部同じものを作成し、それを持って所定の印紙・郵券を添付
して裁判所の受付に持参する事になります。実際に裁判所に指定される裁判
の日は場所のより様々ですが東京ですと約1ヶ月先が目安となります。
その間に相手方(被告)に対し訴状の1部が郵送されるとともに書いてある
事実に間違いがあるか否かを問う書面(答弁書)が郵送されます。
これに対する被告の対応は様々であり、受け取ったものの答弁書を決められた期日までに提出をしない場合があります。この場合は争う意思がないと看做され原告の勝訴で終了です。
また、答弁書は提出したものの当日出席しない事も考えられます。この場合
出席しなくても答弁書に書いた事を答弁をしたと看做されます(擬制陳述)
ここでも内容を争う旨の記述がない場合にも勝訴となります。ただ、一般的に
答弁書を出してくる場合には出席してくる可能性が高いので実情です。
この場合に多く見受けられるのは、債権の存在は認めて分割払いを希望する
パターンでしょう。その申し出に応じるならば具体的な支払い方法(何時から、何回払い)を記載した和解調書を作成して終了です。

問題なのは相手方が全面的に争ってきた場合です。
これについては様々なパターンがありますので、後日、書かせて頂きます。

2009年01月15日

売買代金を請求する場合について(その2)

昨日の続きです。

あなたが先に財産権(物)を渡したのに、支払いがなされなければ当然の事
ながら相手に対して代金の請求をするか、さもなくば財産権(物)の返還を
請求するでしょう。しかし、財産権(物)が既に存在しない場合にはやはり
金銭を請求せざるを得ないでしょう。
相手方が素直に払ってくれれば何の問題もないのですが、相手が開き直った
時には普通の交渉で金銭を回収するのは非常に困難と言うしかありません。
この様なご相談があった場合、相手方のそれまでの対応にもよるのですが、
まず内容証明にて金銭の請求をする事になります。
当事者間では拗れて解決しない問題も第3者が入る事で案外解決してしまう
事が多いのも事実です。
しかし、なかには誠意ある対応をせず開き直るタイプの人間もいますので
この場合には已む無く訴訟手続きでの回収を選択せざるを得ません。
そこで訴訟をするにあたり何か証拠が必要な事はTV等でご存知でしょう。
では、何が証拠になるのでしょうか?
ここで思い出して欲しいのは、昨日書きました民法555条の規定です。
この条文を簡単に要約してみると

(民法555条)
財産権を移転する事を約し、代金を支払う事を約することで効力が生じる。

これを素直に読むと約束だけでOK!であり、財産権または金銭の移転は
不要である。と解釈出来ます。しかしながら、大根1本を買う場合でも
「売って下さい。」「売りましょう。」と言う約束のみで大根も金銭も
それぞれ手元からそのまま動かないと言うのは普通考えられません。
そこで訴訟でも
売って下さい。(例えば、メール・FAX等での注文)
売りましょう。(例えば、持参・郵送等での引き渡し)
②のみでは相手に財産権が到達したか不明なため受領したことを証する書面

以上のものが揃っていないと訴訟を起こすのが難しいのです。
これ以降につきましてはまた明日に書かせて頂きます。

2009年01月14日

売買代金を請求する場合について。

皆さんも普通に生活するなかで様々なものを購入してその代金を支払って
いると思いますが、これらは全て売買と言う法律行為に該当します。
例えば、大根1本を八百屋さんで購入する行為(売買)もあたります。
これは民法と言う法律のなかに規定がありましてこの様に書かれています。

(民法第555条)
 売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方
 がこれに対しその代金を支払うことを約するによって、その効力を生ずる。

小難しそうに見えるかも知れませんが、簡単に表現しますとこう言う事です。
(買主)
「値札にあるお金払いますから、この大根を売って下さい。」
(売主)
「はい!(お金を受け取り)毎度ありがとうございました。」

単純に言えばこれで売買契約は有効に成立して何の問題もありません。
しかしながら、世の中の売買は様々な契約体系や慣習がありこの様に簡単で
ないのが現実であり、そのせいでトラブルも少なくありません。
例えば、会社などの企業は先に財産権(物)を受け取り月末で締めて翌月に
一括で清算(支払い)と言った形式を取るのが通常ですので大根1本の様に
目の前で物と金銭が同時に移転すると言う単純な形態ではありません。
では、上記の会社のような翌月払いの場合に支払いがされなかった場合に
皆さんが売主だったらどの様な対応をするでしょうか?
続きは明日に続きます。

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